Opus の応答が最大2.5倍速くなる代わりに、トークン単価が2倍。Claude Code の /fast はその一点だけを切り替えるトグルです。モデルも賢さも変わらないので、判断材料は「待ち時間と金額のどちらが惜しいか」に絞られます。
速くなるのは出力トークン毎秒だけ
fast mode は別のモデルではありません。公式ドキュメントは冒頭でこう書いています。
Fast mode runs the same model with a faster inference configuration. There is no change to intelligence or capabilities.
同じ重みの Opus を、速度優先の配信経路に流すだけ。出力の品質は変わりません。
TTFT は縮まらない
公式の “How fast mode works” は、速度改善の対象を output tokens per second (OTPS) と明記し、time to first token (TTFT) ではないと書き添えています。最初の1文字が出るまでの待ち時間は変わらない。長い出力ほど体感差が出る作りで、ストリーミングで受け取ったときにいちばん見えます。
対応は Opus 5 と Opus 4.8 だけ
Sonnet と Haiku は非対応。Opus 4.7 の fast mode は 2026年6月25日に非推奨、7月24日に削除されました。Claude Code は fast mode 非対応のモデルに切り替えると fast mode を自動でオフにします。API 側で speed: "fast" を claude-opus-4-7 に投げるとエラーになる。
Claude Code v2.1.219 以降、fast mode の既定モデルは Opus 5。それ以前は v2.1.154〜v2.1.218 が Opus 4.8、v2.1.142〜v2.1.153 が Opus 4.7 でした。
effort を下げるのとは別の軸
公式の “Fast mode vs effort level” は両者を分けて整理しています。fast mode は品質そのままで低レイテンシ・高コスト。effort を下げるのは思考時間を削る方向で、複雑なタスクでは品質が落ちうる代わりに安い。向きが逆なので併用できます。単純作業を最速で回したいなら fast mode と低 effort の組み合わせ。モデル自体の選び分けは Claude Code /model—opus・sonnet・opusplan の使い分け にまとめてあります。
/fast で切り替える
/fast
実行結果:
Fast mode ON
プロンプトの脇に ↯ が出ます。もう一度 /fast を打てば現在の状態を確認でき、ONならOFFに落ちる。Tab キーでも切り替わります。
別のモデルで作業中に有効化すると、Claude Code が自動で Opus に切り替える。逆に /fast でオフに戻しても Opus のままです。元のモデルに戻すには /model を使います。
設定ファイルに書けば毎回ONで始まる
ユーザー設定ファイルに書いておく手もある。
{
"fastMode": true
}
実行結果: 起動直後から ↯ が表示され、fast mode で会話が始まる。対話セッションで /fast をONにした場合も、既定ではその設定が保存されてセッションをまたいで残ります。
-p の非対話モードは --settings 経由でしか効かない
claude -p --settings '{"fastMode": true}' "変更点を要約して"
実行結果: fast mode でそのセッションが走る。ただし効果はそのセッション限りで、既定としては保存されません。--settings なしで起動した非対話セッションで /fast を呼ぶと、fast mode は利用できないという応答が返ります。CI のバッチ実行はレイテンシが結果に影響せず、単価だけが2倍になる。標準速度のままでよい。
モデル切り替えに追従する
非対応モデルに切り替えると fast mode はオフ。対応する Opus に戻すと、保存された設定がONならまた自動でONになります。設定がOFFのセッションでは、モデルを戻してもONにはならない。v2.1.208 より前は戻してもOFFのままで、/fast の再実行が必要でした。
切り替わるたびに Fast mode ON / Fast mode OFF が表示されます。/model でも /config model=<model> でも Remote Control 経由でも同じ。v2.1.218 より前は後者2つで確認メッセージが出ませんでした。
料金は通常 Opus のちょうど2倍
| モデル | 入力 (1MTok) | 出力 (1MTok) |
|---|---|---|
| Opus 5 / Opus 4.8(通常) | $5 | $25 |
| Opus 5 / Opus 4.8(fast mode) | $10 | $50 |
この単価は 1M トークンのコンテキストウィンドウ全域で一律。20万トークンを超えても追加の割増はありません。
サブスクの利用枠は消費しない
Pro / Max / Team / Enterprise のいずれでも使えますが、公式の “Requirements” は fast mode を usage credits 経由でのみ利用可能と書いています。プランに含まれる利用枠が残っていても、fast mode のトークンは最初の1トークンから usage credits に請求される。前提として、アカウントで usage credits を有効にしておく必要があります。個人は Console の請求設定から、Team / Enterprise は管理者が組織単位で。
fast mode の消費は usage credits 側に出るため、プラン内の利用量だけを見ていても金額が追えません。予算まわりは Claude Codeのコスト制限—max-budget-usdが上限を超える理由 を併せて確認してください。
会話の途中でONにすると、そこまでの文脈全部に fast 単価が乗る
会話の中で初めて fast mode を有効にした瞬間、その時点の会話コンテキスト全体にキャッシュ未ヒットの fast mode 入力単価がかかります。理由はプロンプトキャッシュの分離で、公式ドキュメントの “Turning on fast mode” セクションに機構が書かれている。速度の異なるリクエストはキャッシュ済みのプレフィックスを共有しないため、切り替えた時点でコンテキストを読み直すことになります。
会話が深いほど高くつく。公式が “Understand the cost tradeoff” でセッションの最初に有効化するよう勧めているのはこのためです。課金は1つの会話につき1回きりなので、そのあとON/OFFを往復しても再度かかることはありません。
「Fast mode unavailable」が出るときの切り分け
Claude Code は fast mode を提示する前に、組織で fast mode が使えるかを api.anthropic.com へ直接問い合わせて確認します。このチェックが ANTHROPIC_BASE_URL をたどらないのが厄介なところ。公式の “Use fast mode behind proxies and LLM gateways” が明記しているとおり、LLM ゲートウェイ経由で推論は通っているのに、api.anthropic.com への直接の egress が塞がれているとチェックだけが失敗します。
社内ネットワークで /fast がネットワーク接続の問題と返り、通常の会話は問題なく動いていて原因が分からなかったことがあります。推論とチェックで宛先が違う、というだけの話でした。
チェックは HTTP プロキシ設定は使うので、プロキシ越しでも api.anthropic.com に届かないネットワークでだけ失敗する。一度成功したチェックはキャッシュから効き続けるため、影響を受けるのは主に新規インストールです。
症状ごとに設定する変数が違う
| 表示されるメッセージ | 原因 | 設定する変数 |
|---|---|---|
| Fast mode unavailable due to network connectivity issues | チェックが接続拒否された、またはゲートウェイ発行の資格情報が拒否された | CLAUDE_CODE_SKIP_FAST_MODE_NETWORK_ERRORS=1 |
| Fast mode has been disabled by your organization(組織では有効なのに出る) | ANTHROPIC_AUTH_TOKEN だけで認証している、またはTLS検査プロキシが200のブロックページを返している | CLAUDE_CODE_SKIP_FAST_MODE_ORG_CHECK=1 |
| Fast mode is currently unavailable | CLAUDE_CODE_DISABLE_NONESSENTIAL_TRAFFIC がチェック自体を抑止している | 上のどちらでも復帰する |
2つの変数は役割が違います。SKIP_FAST_MODE_NETWORK_ERRORS は失敗したチェックを利用可とみなす一方、「組織で無効」という応答はそのまま尊重する。SKIP_FAST_MODE_ORG_CHECK はチェックそのものを飛ばす。ネットワークが接続を拒否するケースは前者、横取りして別の応答を返すケースは後者です。
export CLAUDE_CODE_SKIP_FAST_MODE_ORG_CHECK=1
claude
実行結果: /fast が通り Fast mode ON が表示される。
変数を入れてもAPI側では止まる
どちらの変数もクライアント側のチェックにしか効きません。組織が実際に fast mode を無効にしている場合、変数の有無に関係なく API がリクエストを拒否します。これらは切り分け用の変数で、組織側の設定を上書きするものではありません。
allowlist で直せるケースとそうでないケース
ネットワークのブロックが原因なら、api.anthropic.com への直接 egress を許可するのが正攻法。ただしゲートウェイ発行の資格情報が Anthropic に拒否されているケースでは、何も塞がれていないので allowlist は効きません。ANTHROPIC_AUTH_TOKEN だけで認証しているケースはそもそもチェックのリクエストを送らないため、これも allowlist では直らない。
レート上限と usage credits 切れは挙動が違う
fast mode のレート制限は通常 Opus とは別枠で、対応する Opus モデルは全部で1つのプールを共有します。上限に当たると自動で標準速度に落ち、↯ がグレーに変わってクールダウン中を示す。作業は標準速度・標準料金で続き、クールダウンが明けると自動で fast mode に戻ります。
usage credits を使い切った場合は別の挙動になります。拒否された各リクエストが標準速度で再試行され、クールダウンはない。対話セッションでは「Fast mode disabled · usage credits exhausted」が出てそのセッション中はオフになりますが、保存された設定は変わらないので /fast で戻せます。非対話モードで --output-format stream-json を使っている場合と Agent SDK 経由では、同じ文言が subtype notification の system メッセージとしてストリームに流れ、fast mode はオンのままになる。
組織のコストを止める設定
保存された設定は新しいセッションにも引き継がれます。並列で5セッション動かせば、5本とも fast mode で走る。公式の “Require per-session opt-in” が用意しているのがこの設定です。
{
"fastModePerSessionOptIn": true
}
実行結果: 各セッションが fast mode オフで開始し、使いたい人が明示的に /fast を打つ形になる。ユーザーごとの設定自体は保存されたままなので、この設定を外せば元の持続する挙動に戻ります。Team / Enterprise では server-managed settings 経由で組織全体に配布できます。
Team / Enterprise は Owner の有効化が先
Team / Enterprise の組織では fast mode が既定で無効。Owner が明示的に有効化するまで、メンバーが /fast を打つと「Fast mode has been disabled by your organization」が返ります。Console(API 利用)は管理者が Claude Code preferences で、Claude AI の Team / Enterprise は Owner が Admin Settings > Claude Code で有効化する。
組織の availableModels 許可リストから fast mode 対応の Opus が外れている場合は、「is not in your organization’s allowed models」で拒否されます。例外は、許可された fast mode 対応 Opus で既に動いているセッション。この場合はモデルを切り替えずに、現在のモデルのまま fast mode が有効になる。
完全に封じるなら環境変数
CLAUDE_CODE_DISABLE_FAST_MODE=1 を設定すれば fast mode 自体を無効化できます。設定ファイルを配れない環境でも、シェルの初期化ファイルや CI の環境変数で同じ効果が出る。
まとめ
/fastは Opus 5 と Opus 4.8 専用。Sonnet・Haiku では使えない- 速くなるのは出力トークン毎秒で、最初の1文字までの時間は変わらない
- 単価は $10 / $50 per MTok。通常 Opus のちょうど2倍で、1M コンテキスト全域に一律
- サブスクの利用枠には入らず usage credits から引かれる。credits の有効化が前提
- 会話の途中でONにすると、その時点のコンテキスト全体に fast 単価が1回かかる。セッションの最初に入れるほうが安い
- ゲートウェイ配下で使えないときは、接続拒否なら
CLAUDE_CODE_SKIP_FAST_MODE_NETWORK_ERRORS、横取りされているならCLAUDE_CODE_SKIP_FAST_MODE_ORG_CHECK - チームのコスト制御は
fastModePerSessionOptInでセッションごとの明示指定にする
fast mode は research preview です。機能・価格・提供範囲は今後変わりうると、公式も “Research preview” セクションで明言しています。ここに書いた挙動は Claude Code v2.1.226 時点のもの。

